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あの虹を越えて

牧が幸せになれて本当によかった|『おっさんずラブ』が好きすぎて vol. 5

牧が幸せになれて本当によかった。

いや、ほんとうの幸せはこれからの生活のなかでこそ実現されるのかもしれないけれど、最後のじゃれ合いや倒し合いを見るにつけ、きっと大丈夫なんだろうと思う。「世間はいつだってうるさい」けれど、2人にとって大事なものを大切にしていって欲しいなと思う。

 

牧について

牧が幸せになれたのは、自分の幸せに向き合うことができるようになったからだと思う。

牧にとっては周りからの評価が辛かった。「完璧だね」って言ってくれるちずの言葉が重かった。自分で自分のことを「欠陥だらけ」といってしまうくらいに、自分への劣等感が強かった。若くて、イケメンで、フレッシュで、仕事ができて、なんなら巨根にもかかわらず、自己肯定感が低かった。

そんな中で、武川さんから投げかけられる言葉の数々が、牧が行動を変えるきっかけになっていたように思う。「自分の幸せより、相手の幸せか」という言葉を受けて春田を実家に誘ってみたものの、結局は「自分が安心したいだけ」だったと卑下してしまう牧。

結局、相手のことを思って自ら身を引いて、それでも心のどこかにずっと春田さんが居て。変わらないまま、変われないまま1年が過ぎて、表面だけは元通りになったって、春田に思ってもらえるくらいには取り繕うことができるようになって。

そんな牧を見かねた武川さんが、「お前がそうやっていつまでも春田と向き合わないから、俺はお前を諦めきれない」「相手の幸せのためなら自分は引いてもいいとか、どっかのラブソングかよ。そんな綺麗事じゃねぇだろ、恋愛って」と声を荒げる。牧がちずに言った「ほんとうに好きな人には幸せになってもらいたいじゃないですか」って言葉、武川さんは牧に対してそう思っているんだな、って。

寡黙なのか、男気があるのか、不器用なのかよくわからない武川さんが、それでも牧には幸せになってもらいたいって思っていて、そのためには牧が牧自身の気持ちに、幸せに、向き合う必要があるんだってことを伝えたかったんだと思う。天空不動産に入社するきっかけになった武川さんの言葉だからこそ、牧も素直に聞き入れることができたのかもしれない。

最後の最後、春田からの告白に対しても、「俺と居たら、春田さんは幸せになれませんよ」と言い放つ牧だったけれど、このときの牧は、これまでの悲壮に満ちた目とは違って、どこか希望というか、うれしさというか、そういうものに満たされた目をしていたような気がする。春田が牧のもとに戻ってきてくれたことに対するちょっとしたS心もあったのかもしれない。

「だからさぁ、おまえはいつもさ、そうやって勝手に決めんなよ。俺は、おまえとずっと一緒に居たい」っていう春田に抱き締められて、「ただいま」 っていう牧がほんとうに愛おしかった。牧、よかったなぁ。ほんとうによかった。

 

春田について

牧が幸せになれたのは、春田が自分の幸せを考えることができるようになったからだと思う。「押しに弱すぎる」お人好しの春田が、部長との暮らしを通して、そして部長からのプロポーズを受けて、自分の中にある心のざわつきに気づく。その理由を考える。

ずっと「わかんねーんだよ」と言い続けてきて、結局ずっとわからないままだった春田が、誓いのキスをうながされて逡巡する。牧との思い出がフラッシュバックする。牧としたキス、牧が見せた笑顔。思い出は楽しいもので溢れているのに、最後の思い出だけが泣き顔の牧で。そこで春田は気づいたのかもしれない。ずっと一緒にいるから、家事をしてくれるから、だから好き、というのとは違う。そういう好きとは違う感情が自分のなかにあることに。それがなんなのかよくわからないけれど、部長とキスをするのは違う。

部長との暮らしが春田にもたらしたものはなんだったのか。部長もはるたんのことがほんとうに好きだから、だからこそ幸せになってもらいたかった。やさしい嘘で春田を解き放った部長がかっこよかった。

牧に思いを告げる春田が、もうびっくりするほどブサイクで、泣き散らかした表情にやっと気づけた思いを感じた。まだたぶん、わかんねーことだらけだと思うけど、牧のこと、大切にして欲しい。心からそう思う。

第6話を見てからこっち、春田のお人好し加減に胸騒ぎが止まらなかった。記事を書くにも書くことができなかった。日々の忙しさを理由にしてこの物語から距離を置いた。それでもやっぱり気になって、最終話を観ることにした。観てよかった。春田、ありがとう。

 

 

 

「自分自身の幸せ」を考えることがこのドラマのテーマにあったように思う。「幸せを考える」なんてたいそうなことで、なかなかするようなことじゃない。けれど、このドラマの登場人物はみなそれぞれにそんなことを考えていて、彼らの視点を借りて、僕はそんなことを考えることができていたのかもしれない。(そうじゃない、そうじゃないよ、春田!)って憤り、(牧ぃ、つらいよなぁ、牧ぃ)って涙しながら。この7週間、心がオーバードライブしてた。

結局のところ、ドラマのなかで「愛ってなんなんでしょうね」に対する明確な答えは出てこなかった。いきなり1年後に話の時間が飛ぶあたり、未来のことはわからない、ってことを暗示しているのかもしれない。つまりそれは、「愛ってなんなんでしょうね」に対する答えは、観た人ひとりひとりが牧と同じように、あるいは春田と同じように考えてみては、という提案なのかもしれない。

 

 

次は僕が考える番だ。僕の1年後はどうなっているだろう。

 

 

おっさんずラブ』に会えてよかった。

 

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